飲酒運転による悲惨な死亡事故が起こり、10年ほど前から飲酒運転が厳罰化されています。
しかしながら10年前と比べると飲酒運転の交通事故件数は半分ほどに減少してはいるものの、根絶には至っていません。
たとえ事故を起こしていなくても、飲酒運転をすると処罰される規定があるのです。
さらに飲酒運転は前科となってしまう事もあります。
運転者だけではなく同乗者も処罰される飲酒運転の罰金や罰則について解説します。
飲酒運転は2種類に分類されている

道路交通法では飲酒運転を「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2つに分類しています。
- 酒気帯び運転
呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上検出される状態で運転している場合。
実際にどれだけのアルコールを摂取したかを測定するため、アルコールに強いか弱いかは関係がない。 - 酒酔い運転
まっすぐに歩けない、受け答えがおかしいなど客観的に見て酒に酔っている状態で運転している場合。
警察官の客観的な判断によるため、アルコールに弱い人の場合は呼気中のアルコール濃度が酒気帯び運転の基準値より低くても酒に酔っていると判断される可能性がある。
2つの飲酒運転の違いは上記のとおりです。
どちらの飲酒運転に該当するのかは判別方法が異なっており、さらには罰則も異なっています。
飲酒運転の判別方法は?
■酒気帯び運転の判別方法
酒気帯び運転の判別はアルコール検知器を用いて運転手の呼気の中に含まれるアルコールの量を測定します。
一定濃度以上のアルコールが検出されると酒気帯び運転となり、呼気中のアルコール濃度によって罰則が変わり、当然ながら濃度が高いほど罰則が厳しいです。
見た目には全く酔っていないように見えても検知器でアルコールが検出されれば酒気帯び運転となります。
お酒を飲んだ翌日でもアルコールが分解しきれていなければ酒気帯び運転となり得ますので、朝早くから運転する予定がある場合は前日のお酒は控えた方が安心です。
■酒酔い運転の判別方法
酒酔い運転の判別はアルコール検知器を使用するのではなく、警察官が酒に酔っているかを判断します。
- 呂律が回っていない
- 顔が赤い
- まっすぐ歩くことが出来ない など
一般的に酒に酔うと現れる症状が見られると「酒酔い運転」と判断されます。
お酒への強さは個々人によって異なりますのでビールを何杯飲んでも酔わない人もいれば、お酒入りのお菓子を食べただけで酔ってしまう人もいます。
飲酒量に関わらず酔っているように見えれば「酒酔い運転」と判断されてしまいますので、お酒に弱い事を自覚している方は車の運転をする時には食べ物にアルコールが含まれていないかも用心した方が良いかもしれません。
飲酒運転に科される処分と罰則はどんなもの?

飲酒運転には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類がありますが、処分にも刑事処分と行政処分の2種類があり、それぞれ罰則が異なります。
運転者と同乗者でも罰則の内容は異なりますので表を使って罰則の内容を解説します。
運転者の刑事処分と行政処分の罰則
■運転者の刑事処分の罰則
懲役期間 | 罰金 | |
酒気帯び運転 | 3年以下 | 50万円以下 |
酒酔い運転 | 5年以下 | 100万円以下 |
※罰則は懲役「または」罰金となる
■運転者の行政処分の罰則
以下の表で記載している「免許の取扱」は他の違反の点数や、免許停止の前歴がない場合になります。
点数・前歴の状況によっては免許停止期間や欠格期間が長くなる可能性がありますのでご注意ください。
アルコール濃度 | 点数 | 免許の取扱 | 欠格期間 | |
酒気帯び運転 | 0.15~0.25mg未満 | 13 | 停止90日 | ーー |
0.25mg以上 | 25 | 取り消し | 2年 | |
酒酔い運転 | なし | 35 | 取り消し | 3年 |
※「欠格期間」とは免許取り消しになった後、免許の再取得が出来ない期間のことをいう
同乗者の刑事処分の罰則
運転者が酒を飲んでいることを知りながら車に同乗した人にも刑事処分で以下のような罰則が定められています。
運転者の飲酒分類 | 懲役期間 | 罰金 |
酒気帯び運転 | 2年以下 | 30万円以下 |
酒酔い運転 | 3年以下 | 50万円以下 |
※罰則は懲役「または」罰金となる
また、同乗者が運転免許を取得している場合は免許の停止・取り消し処分も有り得ます。
飲酒運転は2種類の罰が科される

飲酒運転は行政処分と刑事処分の両方の罰を受ける可能性があります。
一度の飲酒運転で、なぜ2種類の罰を受けるのか?と思うかもしれませんが、行政処分と刑事処分は処罰する目的が異なっています。
行政処分は将来的に危険に繋がる可能性のある行為への対応のための処分です。
そのため軽微の交通違反には違反点数を加点し、累計点数が一定に達した場合や重度の交通違反には免許の停止・取り消しも行われます。
一方で刑事処分は過去の行為に対する処罰の意味合いがあります。
裁判を経て懲役や罰金などの処分が決定され、過去の行いを償うということを目的としているのです。
そもそもの罰の目的が異なりますので、行政処分と刑事処分の進行は別々に行われます。
そのため、お互いの処分に影響を与えることは無く、基本的には無関係で事態が進行します。
刑事処分で不起訴や無罪となっても、行政処分では免許停止・取り消しになることもあるのです。
飲酒運転は前科になる可能性がある

飲酒運転の刑事処分は前科になる可能性があります。
■前科とは?
裁判で有罪判決になり、罰金以上の刑罰が科されると「前科」となる、いわば有罪の履歴。前科となる有罪判決は「死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料」の6種類。
「執行猶予」であっても前科となる。
逮捕されると前科が付くと思っている人も多いですが、裁判で有罪判決が出て刑が確定して初めて「前科」扱いとなります。
そのため逮捕されたけど裁判で無罪判決が確定した、逮捕されたけど不起訴処分(裁判にならなかった)になった場合は前科は付きません。
飲酒運転で前科になる可能性があるのは運転者だけじゃない!
ここで注意したいのが、飲酒運転の同乗者にも刑事処分で「懲役・罰金」が科されるということです。
つまり「お酒を飲んだ人が運転する車に乗っていた」だけでも前科が付く可能性があります。
かつては飲酒運転をした運転者のみの罰則でしたが、1999年の東名高速飲酒運転事故が発生して以来、飲酒運転の厳罰化を求める声が高まり、2007年9月に改正された道路交通法で同乗者にも罰則が設けられました。
さらに、飲酒していることを知っていながら車を提供した者、酒を提供した者も処罰されるようになり、飲酒運転に対する罰則は運転手だけにとどまらないのです。
「飲んだら乗らない」を鉄則に!

多くの人が知っているようにアルコールを飲むと判断能力・運動能力が鈍り、通常とは異なる行動を取ってしまいます。
そのような状況で車を運転すれば命に関わる事故に繋がりかねません。
「自分はお酒に強いから一杯くらいなら普段と変わらず運転できる」と思っていても、酒気帯び運転の罰則もありますので、決して運転してはいけません。
運転者だけではなく同乗者や車・酒の提供者も処罰されるので、車を運転する人にお酒を勧めることは決してしないでください。
もしも車を運転して帰らないといけないのにお酒を勧められた場合ははっきりと断るか、断り切れない時には運転代行サービスやタクシーの利用を検討してください。
飲酒運転以上に身近な違反「スピード違反」については以下の記事にて解説しています。
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