環境問題への意識の高まりや、燃費などの経済性から「エコカー」をに関心を持つ方が増えています。
トヨタのプリウスを筆頭に、各メーカーから様々なハイブリッドカーが発売されており、街中で見かけることが非常に多くなりました。
そんなエコカーですが、ハイブリッドカーよりもさらに環境に配慮されており、なおかつ経済的にも優れている電気自動車も街中を走り回るようになりつつあります。
今回の記事では電気自動車についてガソリン車との違いや、メリット・デメリットについて解説します。
電気自動車とは
電気自動車とは、電気で走る車の事です。
車に内蔵されているバッテリーに事前に充電をしておき、走行時には電力を使用することでガソリンや軽油なしで動かすことができます。
従来の車はガソリンや軽油といった「化石燃料」を使用して走行するため、車に乗ることで地球の資源が減少してしまうことが危惧されていました。
また、ガソリン車は化石燃料を燃焼することで走行することができます。
そのため走行時にCO2を排出するだけでなく、燃料であるガソリンや軽油を作るためにも大量のCO2が排出されることから、地球温暖化を促進してしまうということで環境にも悪影響を与えると言われています。
電気自動車の場合、ガソリン車と比較するとCO2の排出量を40%ほど減少させることができるそうです。
フランス政府は2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売禁止を発表しており、電気自動車が様々な環境問題の改善に役立つのではないかと期待されています。
スポンサーリンク
電気自動車のメリット
ガソリン車と比較した場合の電気自動車のメリットについて解説します。
維持費が安く、経済的
電気自動車のメリットとして一番に考えられるのがガソリン車よりも家計に優しいことです。
以下の2点から電気自動車はガソリン車より経済的と言えます。
燃料費が安い
電気自動車の場合、ガソリン車よりも燃料費が安くなります。
一般社団法人次世代自動車振興センターの試算では、一般的な電気契約で100㎞ごとに約380円安くなるとのことです(出展:一般社団法人次世代自動車振興センター)。
もちろんバッテリーの状況や車の使用状況によっても変わってきますが、年間の走行距離が10,000㎞ほど場合、ガソリン車と比べると年間で約4万円ほど燃料費が安くなるようです。
また、ガソリン価格は社会情勢に左右され価格の変動が激しいのに対し、電気料金は価格の変動が少ないのも特徴です。
この点も含めてガソリン車よりも電気自動車のほうが燃料費が安くなる傾向にあります。
消耗品の交換が少ない
ガソリン車では車検やメンテナンスの際にエンジンオイルを交換することが多く、家計を悩ませることになると思います。
電気自動車の場合はそもそもガソリンエンジンが搭載されていないため、エンジンオイルの交換が不要です。
ブレーキもガソリン車とは異なりブレーキパッドを使用しない減速方法が採用されています。
そのため電気自動車はブレーキパッドの交換もほとんど必要なく、廃車までブレーキパッドを交換しないことが多いようです。
消耗品の交換が少ないため、経済的であるのも電気自動車のメリットの一つですね。
環境に優しい
冒頭にも述べたとおり、電気自動車はガソリン車と比べるとCO2の排出量が少なくなっています。
約40%ほど排出量を減らせるため、CO2が原因とされている地球温暖化を始めとした各種の環境問題の改善につながるのではないかと期待されています。
蓄電池として使える
電気自動車の大きな特徴として、走行していないときに蓄電池として使える機能があります。
バッテリーに貯めた電気を使うことができるので、天災の多い日本では災害時に安心な備えとなるでしょう。
もちろん災害時だけではなく日常的に大容量のバッテリーとして使うことも可能です。
例えばキャンプの時にエンジンをかけないままで冷蔵庫やドライヤーを使用したり、大きめのライトを使用することも出来ます。
アイディア次第で様々なシーンに使用できそうですね。
補助金の対象になっている
電気自動車はクリーンエネルギー自動車(CEV)の一つとして補助金の対象になっています。
クリーンエネルギー自動車(CEV)には数種類あり、それぞれ補助金の額が異なります。
クリーンエネルギー自動車の種類 | 補助金上限額 |
電気自動車 | 40万円 |
プラグインハイブリッド自動車 | 20万円 |
燃料電池自動車 | 22万5千円 |
クリーンディーゼル自動車 | 15万円 |
上の表のように電気自動車は最大で40万円の補助金が支給されます。(車種により異なります)
補助金の申請は車両ごとに一回のみ(新車のみ)であったり、補助金を受けた車両は、定められた期間(4年または3年)は保有することが義務付けられるなど、いくつかの条件があります。
条件があっても最大で40万円の補助金は非常に大きいですから、電気自動車を購入する際には申請を忘れないようにしたいですね。
詳しい条件などは一般社団法人次世代自動車振興センターのウェブサイトで確認できます。
また、自治体によっては独自の補助金制度を設けていることもあります。
電気自動車がより購入しやすくなりますので、お住まいの自治体のウェブサイトをご確認いただくことをおすすめします。
税金が優遇される
自治体によっては自動車取得税や毎年5月に支払う自動車税の優遇制度を設けていることもあります。
一例として東京都の制度をご紹介します。
- 自動車取得税
平成21年度(2009年度)から令和2年度(2020年度)に新車の新規登録をした場合、自動車取得税の課税を免除。 - 自動車税
平成21年度(2009年度)から令和2年度(2020年度)までに新車の新規登録をした場合、新車新規登録時の自動車税及び翌年度から5年度分の自動車税の課税を免除。
毎年来るとわかっているとは言え、頭を悩ませる自動車税が免除になります。
車両購入時の補助金と同じく魅力的な制度ですね。
快適な走行性能
燃料費・維持費の安さ、補助金や税金などの国や地方自治体の優遇制度など、金銭面に関することをご紹介してきましたが、もちろん走行性能もガソリン車とは違います。
電気自動車は次の点でガソリン車よりも優れています。
加速性能が良い
車の性能を表す単語の1つに「トルク」という単語があります。
これは車を動かすパワーのことを指しています。
車がスピードを出すためにはエンジンの回転数を上げていく必要があるのですが、この力こそがトルクです。
最大トルクが高いほどエンジンを回転させて車を動かすパワーがあり、加速性能の高い車になります。
しかしながら、トルクが高くても(パワーがあっても)最初からトップスピードを出せるわけではないのは、車を運転している方はもちろん、自転車に乗る方も経験していると思います。
平坦な道であっても走り出しにはパワーが必要で、エンジンの回転数の上昇(自転車の場合は車輪の回転数)とともにスピードが上がっていきます。
ガソリン車では走り出しから最大トルクを出せるわけではないので、エンジンを回転させて徐々に加速して行くのです。
一方、電気自動車ではエンジンではなく電気モーターが採用されているため、走り出しから最大トルクで走行することができます。
そのため、加速性能はガソリン車に比べて非常に高くなり、スポーツカーに匹敵・凌駕する程の加速が可能なのです。
こちらの動画ではアウディ、テスラ、メルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェの5台が停止状態からスタートしてレースをする様子を見ることができます。
唯一の電気自動車であるテスラは7人乗りのSUVであり、他の車と見比べると場違い感を抱きますが、とにかく立ち上がりの加速が良いことがご覧いただけます。
エンジンの回転数が上がっている状態であれば他の車種はやはり早いのですが、レースや高速道路ならいざ知らず、街乗りならば電気自動車の方が有利に思えます。
振動・騒音が少ない
電気自動車は走行の際、非常に静かで振動も少ないです。
ガソリン車はピストンを動かしてエンジンを回転させたり、ガソリンを燃焼・爆発させることにより走行が可能になります。
一方で電気自動車はガソリンエンジンが搭載されておらず、電気のモーターを使用して走行しています。
そのためエンジンの動きによる振動・騒音がなく、快適に運転・走行することができます。
まだ小さなお子様がいる方や乗り物の振動に弱い方にとっては電気自動車の静粛性や振動の少なさは好評なようです。
スポンサーリンク
電気自動車のデメリット
電気自動車のメリットをご紹介してきましたが、もちろんデメリットもあります。
ガソリン車と比較した際のデメリットを解説します。
充電に時間がかかる
電気自動車のデメリットの1つが充電に時間がかかることです。
日産リーフの公式サイトに充電時間の目安が記載されていましたので引用します。
バッテリー容量 |
通常充電※1 | 急速充電※2 |
40kWh | 約8時間(6kW充電器) 約16時間(3kW充電器) |
約40分 |
62kWh | 約12.5時間(6kW充電器) | 約60分 |
※1 バッテリー残量警告灯が点灯した時点から、満充電まで
※2 バッテリー残量警告灯が点灯した時点から、充電量80%まで
ガソリン車が5分程で給油できるのに対し、電気自動車は急速充電で40~60分、通常充電ですと充電器の性能によっては16時間の充電が必要になります。
長距離走行をする場合はバッテリー残量に気を配る必要がありますし、充電にも時間が必要です。
先を急ぐ長距離ドライブの場合には電気自動車は難しいかもしれません。
航続距離が短い
電気自動車の航続距離はバッテリー容量によって変わります。
日産リーフの公式サイトより航続距離のデータを引用します。
バッテリー容量 |
WLTCモード※1 | JC08モード※2 |
40kWh | 322km | 400km |
62kWh | 458km | 570km |
※1 「市街地」「郊外」「高速道路」の各走行モードを平均的な使用時間配分で構成した国際的な走行モード
※2 国土交通省が定めた日本独自のモード。2021年3月に廃止され、WLTCモードに一本化される予定
公式サイトには上記のように書かれてはいますが、ガソリン車の燃費と同じく実際の航続距離はおよそ6割ほどと考えると良いと言われています。
ここでカタログスペックから計算したガソリン車の航続距離もご紹介します。
車種 |
カタログ燃費※1 | 燃料タンク容量※1 | 航続距離※2 |
トヨタ カローラ | 14.6km/L | 50L | 730km |
マツダ マツダ2 | 19.0km/L | 44L | 836km |
ホンダ フィット | 20.4km/L | 40L | 816km |
※1 各公式サイトの主要諸元より
※2 「カタログ燃費×燃料タンク容量」より算出
いずれの車種もハイブリッドタイプではなくガソリンタイプを選択し、WLTCモードの数値を参考にしています。
電気自動車と比べると航続距離が倍近くとなる車種もありますので、長距離走行をしたい場合はガソリン車の方が安心です。
充電できる場所が少ない
電気自動車は充電しないと走ることが出来ませんので、充電スポットの数が重要です。
全国の充電スポットの数は以下のようになっています。
全国の充電スポットの数
- 通常充電 22,500基
- 急速充電 7,800基
- 合計 30,300基
(2019年9月末現在ゼンリン調べ)
充電スポットの合計は30,000基を超えているので一見すると多く見えますが、急速充電は7,800基しかなく、実用的な充電スポットが少ないのが現状です。
その数少ない急速充電スポットも一台の充電時間が40分ほどかかるため、充電待ちができてしまいます。
一方ガソリンの給油所は2018年で約30,000ヶ所となっており、大きく差が開いています。(経済産業省資源エネルギー庁データ)
電気自動車の台数自体が少ないため、充電インフラに関しては難しい点があると言わざるを得ないでしょう。
国産車では選択肢が少ない
国産車の電気自動車はまだまだスタートしたばかりです。
2020年12月現在で補助金対象の家庭用電気自動車は「日産リーフ」「三菱i-MiEV(アイミーブ)」「レクサス UX 300e」の3車種しかなく、他の電気自動車はガソリンエンジンとバッテリーの両積みタイプ(プラグインハイブリッド)となっています。
そしてプラグインハイブリッドも車種が少なく、補助金対象車は「トヨタ プリウス PHV」「トヨタ RAV4 PHV」「三菱 アウトランダー PHEV」「三菱 エクリプス クロス」の4車種となっています。
国産車で補助金に対応している車が7車種しかないのに対し、輸入車の補助金対象車は思いのほか多いです。
電気自動車で有名なアメリカの「テスラ」を筆頭に「BMW」「メルセデス・ベンツ」「フォルクスワーゲン」「ジャガー」など、様々なメーカーの電気自動車・プラグインハイブリッドカーが対象となっています。
しかしながら、電気自動車はガソリン車よりも車両価格が高額です。
ガソリン車よりも50~100万円ほど高額になると言われています。
さらに輸入車になってしまうと非常に高額になりますので、メリットが多くとも購入には勇気が必要でしょう。
しかも補助金対象の国産電気自動車3車種のうち1車種はレクサスのため、国産車でありながら価格帯は輸入車と同等であり、国産の電気自動車から選ぶなら現実的なのは「日産リーフ」と「三菱i-MiEV(アイミーブ)」の2車種となっています。
まだまだ選べる車種が少ないと言わざるを得ない状況です。
スポンサーリンク
電気自動車まとめ
電気自動車には多くのメリットがありますが、同時にデメリットもあります。
メリット | デメリット |
---|---|
維持費が安く、経済的 環境に優しい 蓄電池として使える 補助金の対象になっている 税金が優遇される 快適な走行性能 | 充電に時間がかかる 航続距離が短い 充電できる場所が少ない 国産車では選択肢が少なく、車両価格も高額 |
電気自動車が実用化されてからまだ日が浅く、各社とも試行錯誤しながら車両を制作している段階です。
これからさらに発展していき、より使いやすく、便利な電気自動車が開発されてくると思います。
電気自動車がどのように変わっていくのか楽しみですね。
コメント