車を利用するのであれば、自宅や自宅近くに駐車場があるのは普通ですよね。
車庫証明を取得しなければ車を購入することもできませんし、路上にずっと置いておけば違法駐車でレッカー移動されてしまいます。
保管のために必要な駐車場ですが「自分の駐車場に知らない車が止められている」ということも少なからずあるようです。
私有地や自分が契約している月極駐車場などに他人の車が止められていると、自分の車が止められなくなってしまい途方に暮れてしまいます。
こんな時にはどのような対処をしたら良いのでしょうか?
「とりあえずレッカーを呼んで、後で持ち主にレッカー代を請求しよう」と思っているなら、ちょっと待って!
私有地であっても他人の車を勝手に移動させると自分が訴えられてしまうかもしれないんです!
今回は自分の土地や契約している駐車場に無断駐車をされている時の対応を解説します。
無断駐車の前をふさいで動けなくして良い?


私が契約している駐車場に勝手に駐車してる車がいる!
タイヤロックを設置したり、道をふさいで出庫できなくするなど、何かしら仕返しをしてやりたい!
自分の土地やお金を払って借りている駐車場に勝手に車を止められていれば、そう考えるのは当たり前です。
ですが外国ならともかく、日本で制裁を加えると元々は権利を侵害された被害者側が罰せられるというおかしな事が起こるんです…。
これは日本国憲法で「自力救済」が禁止されているためです。
自力救済の禁止とは?
「自力救済」とは何かしらの権利を侵害された時、司法手続をすることなく実力で権利を取り返す行為のことを言います。
どのような行為が自力救済に該当するのか、例をいくつか紹介します。
自力救済の一例
- 家賃を払ってくれない家のカギをオーナーが勝手に変えること
- 貸した自転車を返してくれない時に相手の家などから自力で取り返すこと
- 無断駐車の車両にタイヤロックをかけ動けなくすること
自力救済行為を認めると、権力・財力・腕力といった「力」のある者が正義ということになってしまいます。
いわゆる「弱肉強食」となってしまい、社会秩序の維持が難しくなってしまうという理由からです。
自力救済を禁止する正式な条文はありませんが、民法200条によるものだそうです。
ちなみに、今まさに自分の権利が侵害されようとしている(自転車が盗まれようとしている等)を防ごうとする行為は正当防衛となり、自力救済とは異なるようです。(もちろん正当防衛の範囲には限度があります)
無断駐車の車両に触るのは控えておくべき
自己救済禁止の理由から、土地や駐車場に無断駐車されたとしても残念ながら出来ることは限られています。
無断駐車した車両が動けないようにタイヤロックやチェーンを使用したくなるかもしれません。
ですが逆に「タイヤロックで車やホイルが傷付けられた!」と器物破損の罪に問われる可能性があります。
また、自腹を切ってのレッカー移動・牽引に関しても自力救済禁止の法則に反する可能性が高いだけでなく、車にキズが付いたと言われる可能性があるため、オススメできない手段となっています。
相手の車に触れるのは危険度が高いため、避けておく方が安全です。
タイヤロックは自分の車を盗難から防ぐために使用してください。
車両を動けなくするのはグレー
相手の車の前に障害物を置いて移動できなくする事を考える方もいると思います。
しかし困ったことに、車両を移動できなくしたことで「権利を侵害された」と言われたりして警察に通報されたり損害賠償請求される可能性があるのです。
他人の土地や駐車場に断りもなく車を止める方が悪いのですが、そのような判断が出来る人間であれば最初から駐車することもないはず。
ネット上では自分の車で相手の車が出られないように塞いでしまった時に警察に通報されてもお咎めなしだったという話もありますが、どんな時でもそのように事が運ぶとは限りません。
損害賠償請求や訴訟の面倒さを考えれば車が動かせなかったからと言って実行に移す人も少ないとは思いますが、世の中には自分とは異なる感性を持っている人が多く存在しているのも確か。
万が一のことを考え、相手の車を動けないように完璧に塞ぐのは避けた方が無難だと思います。
私有地に無断駐車された時の対処は?


無断駐車に対して出来ることは少なく、権利を侵害された被害者なのに理不尽だと感じてしまいます。
やったもん勝ちの法律を制定しているのもどうかと思いますが、社会生活をしている以上守らなければ自分が悪者になってしまいかねません。
自分の立場を悪くしない程度に出来ることを紹介します。
相手の車の写真を撮影・ナンバーの記録
まずは無断駐車している車両の記録を取ってください。
- 外見の写真撮影や車種、色などの記録
- ナンバープレートの記録
- 無断駐車が発覚した日時
これらの記録はしっかり保管しておけば、後々に面倒な事になっても対処できます。
月極など借りている駐車場は管理者に連絡
月極駐車場など借りている駐車場の場合は、まずは管理者に連絡するのが優先です
同じ駐車場を借りている方が間違って止めてしまっている可能性も0ではありません。
別の駐車場所を案内してもらえるかもしれませんので、事を大きくする前にまずは管理者に連絡してください。
警察へ連絡
私有地の場合や管理者と連絡がつかず、周辺に持ち主の姿が見当たらない時は警察に通報してください。
基本的に警察は「民事不介入」のため、無断駐車に対してしてくれる事は多くありません。
ですがナンバープレートを照会し、相手方に連絡してくれたり、拡声器で持ち主に呼びかけはしてもらえるとのこと。
運が良ければ持ち主が現れるかもしれません。
相手の車に張り紙をする
持ち主が出てこない・警察がまともな対応をしてくれない時は相手の車両に張り紙をするのが合法な対応の限界です。
車を止めている場所が自分の私有地や契約している駐車場であること、すみやかに移動すること、今後は二度と駐車しないようにすること、日付などを書いた紙をワイパーに挟んでください。
念のため張り紙をした状態の車も写真撮影しておけば、こちらが対応している証拠にもなります。
この時、接着剤やガムテープなどの粘着力の強いテープを使用すると、車の汚れが落ちない・傷が付いたなどの理由で器物破損呼ばわりされ、こちらが不利になります。本当におかしな法律だな…
そもそも何かされても先に無断駐車する方が悪いのですが、世の中には自分とはかけ離れた感性を持つ人間が存在するのはテレビを見ていれば明らかです。
揚げ足は取られないようにするのが安全です。
無断駐車に常習性のある場合は法的な対応も
無断駐車を何度も繰り返す常習犯の場合には、法に則った対応も検討しなければなりません。
車のナンバープレートから持ち主を割り出すことは通常はできませんが、無断駐車に関しては証拠を提出することで陸運局に持ち主の照会を依頼することが出来ます。
ここで無断駐車をしている車両の写真や駐車日時の記録が役にたちます。
お金もかかるし面倒ですが、弁護士に依頼して損害賠償請求の書類を送ってもらえば、驚いて無断駐車を止める可能性が高いです。
この場合は『周辺のコインパーキングの相場×2~3倍×無断駐車時間』を請求するのが一般的だと言われています。
弁護士に依頼せず内容証明を送付して自分で請求する方法もありますが、後々何があるかわかりませんからね…。
間に専門家を挟むのが安全だと思います…出来ればこの段階まで来たくはありませんが…。
ちなみに内容証明でしたら行政書士でも対応してくれますので、弁護士費用よりは安上がりかもしれません。
無断駐車への予防策を立てておく


無断駐車をされた後ですと、自力救済が禁止されていることから出来ることが限られます。
あらかじめ無断駐車をさせないような対策を立てておくことが大切です。
- 防犯カメラの設置
- カラーコーンやチェーンの設置
- 駐車禁止看板の設置
ある程度の広さがある場合は管理されていないように見えることが無断駐車をしやすい雰囲気になるようです。
防犯カメラを設置すれば無断駐車の証拠が容易に入手できますし、車の盗難対策にもなります。
カラーコーンやチェーン、ポールの設置
カラーコーン・チェーンで出入口を塞ぐことで立ち入りを禁止していると明らかにわかります。
カラーコーンに重りを付けておけば強風対策になりますし、軽いだろうと思い込んで移動させようとする人に多少の意趣返しになります。
ついでに重り入りカラーコーンを車で跳ね飛ばそうとしたら相手の車体にダメージも与えられますね。(車に傷が付いたって?人の所有物を力づくでどかそうとする方が悪いのです。この場合はカラーコーンに傷が付けば「器物損壊」扱いにすることも出来ますね。)
こちらのカラーコーンは重し代わりに水を入れることができ、最大で3.7kgになるのだとか。
水だけじゃなく石と砂を入れれば嫌がらせには完璧ですね。
駐車禁止の看板も設置
あまり効果はないかもしれませんが、駐車禁止看板も無いよりはマシかもしれません。
ただし、よくある「無断駐車は罰金〇万円を請求します」と法外な金額を請求するは法的には認められないそうです。
そもそも「罰金」というのは法律で定められた場合のみに適用される言葉ですので、無断駐車のような個人間のやり取りには用いられないとのこと。
「罰金」という単語を用いず、請求金額も周辺のコインパーキングの2~3倍とするのが妥当です。
いっそ貸し出してしまうのもアリ?
自分で駐車場を使わない時間がある程度決まっているなら、最近知名度が上がっている駐車場のシェアリングサービス「akippa」などに登録するのも一つの手かもしれません。
akippaは余っている土地などを駐車場として貸出できるサービスで、自分に都合の良い時間だけ駐車場として設定することができます。
駐車場を使わない時間は貸し出して副業にできますし、トラブルなど困ったことがあっても駐車場の経営に精通している会社に相談できる安心感もありますね。
akippaに関しては別の記事でご紹介しています。




無断駐車の対策 まとめ
やられると腹のたつ無断駐車。
自己救済が禁止されている日本では、無断駐車に対して出来ることは残念ながら非常に少ないです。
管理人のいる契約駐車場では管理人に連絡、そうでない場合は警察に連絡し、相手に車を動かしてもらう事が基本となります。
絶対にやってはいけないのが相手の車にダメージを与えるような手段を取ること。(レッカー移動・接着剤で張り紙など)
これをやってしまうと器物破損でこちらが訴えられる可能性すらあるんです。
対策として心がけておきたいのは無断駐車をしにくい雰囲気づくりをすること。
防犯カメラやカラーコーン・ポール・看板などを設置し、管理されていることが明らかにすることです。
最近では駐車場のシェアリング・貸し出しサービスもありますので、いっそのことオーナーになって副業とするのも一つの手かもしれません。
被害者が割を食いまくる無断駐車…政治家にぜひともメスを入れていただきたい部分ですね。
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